減る一方の貯金、すさむばかりの心
その後しばらくを、無職のまま、
日の半分以上を寝転がりながら、ぼーっと過ごしていました。
収入がないので、
お金を使うことが、とても怖かったです。
だけど何もしなくても、家賃も光熱費も食費も支払わなければならない。
しかしそれ以上に、税金や保険料が……
まとまった額が出ていくので、恐怖と憎しみが湧きました。
滞納していたら催促の電話が来て、
「ごめんなさい、収入がないので、払えるようになったときに払います」
と伝えたところ、気に障ったのでしょう、
「本来、払っているのが当然なんですからね!」と、叱られました。
当然の対応であることは分かっています。
この人も、仕事のうえでしんどい思いはあるでしょう。
わたしが神経を逆撫でしたのもあるでしょう。
この日はたまたま機嫌が良すぎて、声が浮かれていました。
楽しそうに、社会の害悪になる発言しているのを聞けば、冷水かけたくなるのは当然です。
しかし、
「あなたは働けていいですね、わたしだって収入があれば滞納なんてしませんよ!」
と、逆恨みの気持ちが湧くのでした。
逆恨みと言えば。
わたしの窮状を知った友達が、
食糧を差し入れてくれたことがありました。
しかしわたしからの感想は、
「お金がないとき、本当に苦しいのは食費じゃない。
このひとは、本当にお金に困ったことはないのだな……!
これでわたしを助けたつもりか!」
という、憎たらしさや嫉妬の入り交じった、苦々しい想いでした。
人の親切に対して、このような感情が反射的に湧いてくる自分が、
嫌になりました。
職を失うことを、怖いことではないと思っていました。
エンジニアは元々人員の動きが多く、
需要もある業界です。
辞めても次を探せばいいだけだと……
しかし、わたしが失ったのは、“職”ではなく、
“働く力”です。
エンジニア業に限らず、安定的に何かをすること、
毎日の通勤をこなすことが、もうできないと思いました。
かといって、個人事業にも、適応できない。
この先、どうしたらいいのか。
考えても無駄なので、考えないようにするのですが、
だけどどうしても、頭から離れないのでした。
「それでもいつか、
いつかなんとかできるかもしれない。
なんとかなるかもしれない」
そう考えるしかなくて、
この“妄想”にすがりながら、
現実から目を背け続けました。
その間にも
手持ちのお金は減り、
通帳の残高が4桁になり、
定期預金を解約して、
また残高が4桁になり……
恐ろしくて恐ろしくて、たまりませんでした。
毎日毎日、ただ時間を過ごしながら、
お金の減っていく不安と現状への怒りに震えていました。