お金はないが、人生で1番幸せな時間
「ここにいたくない」
「けど他へ行く力もない」
という葛藤に悶々とする日々をある程度送ったところで、
先輩と共通の知り合いが、声をかけてくれました。
「うちに泊まりこんで、農家さんの元で1ヶ月ほどバイトしませんか」
もうお勤めはこりごり。
毎日動けなくて寝てるだけだし、仕事なんかできるわけがない。
普通の状況なら、断っていました。
でも、今はここにいたくないし……
それに、この知り合いが住んでるところは自然に囲まれているんです。
自然暮らしをずっとしたかった、
北海道に来た目的はこの知り合いのこともある、
これは……これは……
行くしかない!!
怖いけど!!
たとえ失敗が決まってても!!!
それでも!!
というわけで行ってみたところ、
驚きと感動と喜びでいっぱいの日々を送ることになりました。
自然だ……自然だーーー!!
圧倒的植物たちの生命力に驚いて、
薪で燃やす本物の火の暖かさに感動して、
途中から猫も加わって、毎日一緒に過ごして
嬉しくて嬉しくて……!
あと星空……
星空がすっごい…………!
繊細なのに力強い!!
でもなによりびっくりしたのは、
来る前は想像もつかないほど自分の体が動いたことでした。
基礎体力がないので寝込む時間も長かったけれど、
それでもここまで動けるとは、という感じで……!
体力で動いているとはとても思えませんでした。
これは、気持ちだ。
喜びだけで体を動かしている……!
そんなふうになれたことが、うれしい!
そんなふうになれる場所にいられることが、うれしい!!
ずっとずっと猫と一緒に暮らしてみたかった、
それが叶って……うれしい!!
朝は草の上で陽と風を浴び、
夜は星と月の明かりを浴びながらステップを踏み、
傍らにはいつも猫がいて、素晴らしい暮らしでした。
人生の中で一番素晴らしい時期だったと思う。
あ、バイトはなんとかやり遂げました。
ホッとした!
でも、2件目も紹介してもらったのですが、
そちらは1日で辞めてしまいました……
1件めは屋内で座り作業だったのですが、
2件めは屋外で体を動かす業務で、
体力的な厳しさだけでなく直射日光にも弱いため
さすがに無理があったようです。
ほんの1日で体調を崩し、迷いはしましたが辞めました。
その後は特に働かず、
先輩の家に戻る話も何度か出したのですが (※)、
なぜか毎度ウヤムヤに話が流れてしまったのと
自然と薪と猫と星空が惜しかったのとで、
ずるずる居続けてしまい……
※先輩への怒りは、
自然暮らしが幸せすぎて
どうでも良くなっていたという……
(先輩側は良くも悪くもなんでもウェルカムな人なので、
「交流復活できるなら願ったり叶ったりです」という姿勢)
そういう状況下で、
「せっかく良い環境にいるのだから
相談業(※)の再開に向けて動こうかなー」と思い、
少しずつですが、作業を始めました。
※苦悩が多いので、どーにかするために覚えてきた知識や技術を
人様に使ったりもしてたのです。
開業からほとんど、休業してるけど……
しかしいよいよ食事代も払えないので先輩の家に戻ります、
という話をしたとき、
「こちらはナツキさんのやりたいことを応援したいんですから、
相談してくれればよかったのに。
とりあえず1ヶ月、活動のためにご飯無料という投資でどうですか?」
と言ってくれて……
投資を受けたことがなかったし、
自分は事業者とは呼べないほどあまりにも未熟だし、
今やっていることは成果が出ても収入にはつながらないことだったので
どう転んでもうまく行く気はしなかったんだけど……
でも、ここに来たときだって
「失敗が確定してても行くしかない!」だったし、
その後ここで出会ったいろいろなことも
「自分には負担が大きい」と思いながらも一旦は受け入れてみたのだし、
やってみれば何か、今からは想像もつかない進展もあるかもしれない。
ここは……
すごく抵抗あるけど……
受けてみよう!!
ってやって
結果最悪の失敗に終わって
すごすごと先輩の家に帰りました。
……失敗というか、それ以前というか……
相手からは、
わたしが遊んでいるだけで何もしていないように見えたみたいです。
ついでに人生ナメてるようにも見えたみたいで、
「叩き直してやらないといけない」スイッチを入れてしまったようで……
そう見えることを否定できないので正当性は相手にあるし、
投資を受けている身なのだから要求を言い渡されれば呑まないといけないんだけど、
でも、できなかった。
その理由や、実際にやっていることを説明しても
「それは甘え、怠け、遊んでいるだけ」としか言われないので、もう、逃げました。
……はい。逃げました。
やっぱり、わたしには過ぎた話だったんだ。
焦って弁明いっぱいしたけど、
そんなことよりサッサと離れるべきだった……
猫と自然と離れるのが惜しくて、
引き際を誤った……
そんな失意と後悔を持ちながら、
投資期間の食費を渡して、この場を去ったのでした。
貯金もバイト代もとっくにないけど、このときちょうど
兄が昔貸したお金を返してくれたので、それで。