届かない声による懸命な主張

辻ヒール、おやすみ挟んで3人目。

今回の対象者さんはなんの情報もない。
名前は適当、自己紹介文も一言。
でもとりあえず、目に光がない状態なのは分かった。

 

ツイートを追っていくうちに伝わってきたのは……
このひと、主張したいことがいっぱいあるな……

いっぱいというか、内容はシンプルに
「生きづらい世の中だ」に集約されるんだけど
それを様々な表現をしたり引用したりしながら
いくらでも言っていきたい感じ。

そして言葉もしっかりしていて、弁舌主張の才能もありそうだなあ。
主張したいことをこうやってどんどん発していくといいと思う。

 

ただ。

本人の状態が悪いから、言葉が誰にも届いていない。
理路整然と話しているようで、その根底にある感情が乱れ暴れているから
どことなく荒れていて、喚き散らしているような印象になってる。

声も言葉もしっかりしているのに、そこへひどいノイズがかかったようになっていて
何を言っているのかまったく聞こえてこない。
強く言葉を発していることは分かるんだけど。

 

よし、オッケー
第5チャクラの調整で良さそうかな
(喉、コミュニケーション・主張、青色)

 


 

エネルギーの領域へ降りると、そこは歩道橋の上でした。
歩道橋もその下も人通りはそれなりにあります。

「彼」は橋の上に立ち、人々へ拡声器を向けて
自分の主張を延々と張り上げていました。

(おっ、今回は男の子だな)

女性の対応が続いたので、ちょっと嬉しいです。
男女差別をするつもりはないのですが、やはり性別によるエネルギーの違いというのはあって、男性の質もまた面白いですからね。

とはいえ男男している感じではなく、女性とも馴染みやすそうな穏やかな雰囲氣でもあるのですが。

(まあ男男してるタイプは落ち込んだり病むよりも先に割り切ったり切り捨てたりするだろうから、わたしが対象者を探す先に現れることはないでしょうけど……)

歳は若く、でも成人はしているでしょう。
実年齢もそれくらいかな。
スマートでオシャレさんな装いで、でも顔は見えにくいように黒いパーカーのフードを深くかぶっています。

わたしがすぐ隣まで近づいても氣にとめる様子はなく、自分の主張を続けていました。
普通に氣づいていません。

わたしだけでなく、周りの人々にも氣づいていません。
人に主張したくて、人に聞いて欲しくて、人通りのそれなりにあるところを選んでいるのに、彼には道行く人々の存在が認識できていません。
それらは単なる背景に過ぎず、彼の世界には彼しかいません。

そして人々もまた、彼が見えていない、声が聞こえていないかのようです。
それは無視しているのでも心の中で受け取っているのでもなく、耳には届いているのに意識には届いていない状態でした。

 


 

喉のチャクラを見るまえに、全体のざわつきを整えたいなーと思って、その調整をし始めました。

しばらくそうしていても、やはりまったく氣付きません。

しかしある程度進めたところで

『彼が人々へ主張を届けるにあたって、あのフード(で顔を見えにくくすること)は良くないなあ、
もう取っても大丈夫そうだし、取ったろ』

と思い、実行しました。

そこで初めて、彼はわたしの存在に氣がつきました。

 

少し分かりにくいかもしれませんが、
フードを外したこと、その刺激で氣づいたのではありません。

フードをはずせる状態になったことが氣づく下地であり、
フードを外すを実行したことで氣づくが実際に起こった のでした。

 

わたしに氣づいた彼は、その場に座り込み、うなだれました。

「誰も俺の話を聞いてくれない」

使ってる一人称の雰囲氣が「僕」なのか「俺」なのかかなりビミョーなラインなのですが、
限りなく「僕」に近い「俺」ということで
「俺」と表記します。
何言ってるか分かんないかもしれませんがw

 

『それはね、あなたが
誰にも話を聞いてもらえない状態になってるからだよ。

わたしはその状態をなんとかするお手伝いに来たんだけど、エネルギーの調整をさせてもらってもいいかな?』

自分で言ってて氣がついたけど
先に許可とるのわすれたーーーーー!
(だめじゃねえか)

まあオッケーしてもらえたのでよいよい
結果いいからすべて良い
(悪)

 


 

そして、さらなる調整に入りましたが……

は……は……腹減った

おなかすいて集中できない…………

『あの、ごめん』

「?」

『ちょっと体に触れてもいいかな
言うてエネルギー体だけど

本来、相手に触れる必要はないんだけど、
ちょっと今、わたしの現実の体が空腹ひどくて、集中できない…………
触れることで集中力を上げたくてですね……』

OKを貰えたので、今回は触れながらの施術となりました。

 

『じゃあまずは喉を。
なんか首絞めてるみたいになるけど、氣にしないでw』

そう伝えて喉に手をやると、
彼は軽く自嘲的に笑いながら言いました。

「そのまま絞めちゃっても、いいよ」

『…………。

その選択をしなくて良いように来たんだから、それをするわけにはいかないよ』

そう伝えて、喉の調整をはじめました。
イガイガのようなものを解消し、ノイズも打ち消します。

 

『うん、よし。
次は心臓のあたりを失礼』

「そのまま刺しても」

『せんわい』

 

『血液の流れに乗せて全身を調整します。
大きく深呼吸してください』

彼の呼吸に合わせてわたし自身も大きな呼吸をしながら、対応しました。

 

……………………。

 

「なんか、あんた、
ずいぶんとかわいいの連れてるね」

『…………

∑ハッ』

『あ、ごめん、集中切れてた』

 

氣を取り直したわたしの肩には、わたしの守護のひとりであるぬいぐるみみたいな子がまとわりついていました。

『この子は今日、別件で活躍してもらってて……
今一瞬思い出してたので、それで来ちゃったのかも』

「撫でてもいい?」

『どうぞ』

言いながら持ち上げて、抱っこを促すように渡しました。

『こういうかわいいの、好きなの?』

「好き」

『それは良かった』

 

本当に良かった。

 

この子を氣に入ってもらえたことよりも、
「かわいい」「好き」という単語をこの男性がスルッと口にできたことが。

この言葉は、男性にとって抵抗を感じるものであることが多くて、これを自然に言えるかどうかが
素直さとか、氣持ちを大切にできる人かどうかとか、思ったことをきちんと表現できる人かどうかのひとつの指標になったりもするのです。

 


 

彼がもふもふもこもこしてる間に
もう一度喉と全体を調整して、
あと持っていた拡声器も状態が悪くノイズを拡張していたので調整しました。

『よし、終わり。

声を出してみてください』

「あーーーーー」

『うん、いいね。
これで今後は、もう少し人々に話を聞いてもらえるようになるはず』

『あなたはそうやって、人々に何かを主張することに向いていそうです。
続けるといいです。
問題意識もとても高いですし。

あなたの中には怒りや不満がいっぱいありますが、それは個人の怒りじゃない。
ご自身の困難が怒りのキッカケになることはありますが、そこから視野が氣持ちが広がって
個人の枠を超えた社会問題として捉えることができ、しかも冷静に表現することもできます。
それは素質であり、才能であり、役割です。

……というわけで、どうぞ早速、拡声器を使って主張の続きをしてみてください』

「…………」

「あれ…………

何も、言えない……」

言いたいことあんなにたくさんあったのに……?
と、少し驚き動揺しているようです。

『ああ……

状態に変化があったから、いまちょっと空っぽモードかもしれませんね。
1晩寝て、もしかしたらもう少しの時間がかかるかもしれないですけど
でもまあ、いずれまた言いたいことがたくさん湧いてくるようになるので
そうしたら思う存分流してみてください。

それがわたしの事も助けてくれます。
楽しみにしています』

「……ねえ」

『はい』

「そう言うなら、また来てよ。
1人で活動するよりも、お互い協力したほうが、何かと良いだろうし……」

『すみませんが、わたしは誰か1人に特別肩入れする氣はないんです。

それに、あなたには今後仲間が現れると思いますよ。
それはわたしよりも合っていて、協力しやすく、成果も出せる相手です。
だからむしろ、わたしはいない方がいいです。

その人にあなたの声が届くよう、がんばってください。』

 

『ただ……
声を上げるにあたって、
橋の上に立つのは止めましょう。
うっかり落ちることを望む氣持ちもあったでしょうが、そんなことになっても意識の世界では何も変わらないんですし』

そんなことまで言われちゃうのか、と苦笑する彼に別れを告げ、立ち去りました。

 

今回の舞台となった歩道橋は、
いつだったか誰かが
拡声器で主張をした後に焼身自殺をはかった
新宿の歩道橋でした。

彼が場所を変えることはなく、主張をする際にはその場所(似たような場所)を選ぶだろうなという予感はしています。

だけどこれからはその理由が、
危なっかしいものではなく
「ここなら多くの人に聞いてもらえるから」という内容に変わる予感も
またしているのです。

 

感想 (反省)

お腹空きまくりなほかに

ねむみ…………
ねむみが…………

(『∑ハッ』のところ、半分寝てたw)

 

あまりおやすみ挟みたくなかったからがんばって対応してみたけど、やっぱり無理するのはよくないなぁと実感。

集中できないし記憶できないし書き出せないしで

(書き出しは
伝わってきたものを書き留めるだけだからさほど難しくはないんだけど、言葉であって言葉じゃないものを表現するためにどんな単語や言い回しが一番適切なのかを探るという創造性を使っている
負荷あんまりかからないとはいえ意識飛びそうなときはさすがにキツい)

なんとか記事の形にはできたけど、細部細部の記憶飛んでたり違ってたりするのをつなげたり
それで元のエネルギーがどんなだったか曖昧だから言葉選びの違和感も残る出来上がりになってしまって
こう……
ちょっとモヤモヤが残る……!

 

『疲れてるときには無理しない』

当たり前のことだけど、
正式に依頼を受けての対応だったら経験できないやつだったから、
まあ、コレも勉強ですよな。

 

※しかしちなみに今も結構ねむい。
あ、あかん…………
次の記事作りたいんやけど…………

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