その日わたしは外の用事を済ませて疲れきっていて、
しかも天氣は晴れているのに雨は降るし傘は持っていないし (いつも持ち歩いてるのに) で
とてもイライラしていました。
大通りを歩きながら『あと5分で家だから……』と急いでいたら、
何かの集団が道に広がってワイワイしていて、
広い道だから通れなくはないんだけど
苛立っていたので心の中で舌打ちしました。
すれ違って10歩ほど離れたところで、
その集団が
「ワーーーー!!」
「キャーーーーー!!」って
騒ぎ出しました。
振り返るのもおっくうで、
『んだよ、うるせぇな……』と
忌々しく思いながら先を急いだけど、
集団が騒ぎつづけているのが、嫌でも聞こえてきました。
『一体なんなんだよ!!』
攻撃的な氣持ちで振り返ったら、
理由は一目瞭然でした。
虹だ……
しかも、うっすらとだけど、2重だ。
慌てて写真を撮りました。
数秒目を離せば薄くなったのが分かるくらい変化が早くて、
3分も経ったころには消えてしまいました。
わたしは毒氣をすっかり抜かれてしまい、
洗われた心で思いました。
『これは騒ぐ……
集団が騒いでくれたおかげで氣づけた。
しかも大げさなくらいに。
そうじゃなかったら振り向かなかった。
毒づいてごめん。
知らせをくれて、ありがとう』
『集団がいたのも、雨が降ったのも、
疲れたけど今日出かけたことも、
わたしを苛立たせたものはすべて、
伏線にすぎなかった』
『虹は幸運の知らせだという。
わたしの人生は、きっと今後良くなるのだろう』
その後については、
確かに良くなっていると言えるし
その一方で
自分には抱えられないほど大変でもあるんだけど……
願掛けなんてオマケと言えるほど、
虹を見る体験はそれ自体が嬉しいことですね。